みなさまこんにちは、いちまるです(*’▽’)
日経平均が史上最高値を更新し、X(旧Twitter)でもこんな声が増えています。実際、数字だけ見ると「これだけあれば物価高対策できそう」と思いますよね。
円安による物価高、実質賃金の低下、そして年金だけでは生活が厳しいという声が高まる中、GPIFが巨額の運用益を上げているというニュースを見れば、「なぜ今使わないのか」と疑問に思うのは当然です。
でも、答えはNOです。
今回は、「なぜ年金の含み益を今使えないのか」を、制度の仕組みから具体的な数字、そして私たちができる対策まで、わかりやすくまとめてみました♪
GPIFの運用実績をチェック!
GPIFの運用資産の伸びがスゴイ
| 年度 | 運用資産額 | 増加額 |
|---|---|---|
| 2015年度末 | 134.7兆円 | – |
| 2025年6月末 | 263.8兆円 | +129.1兆円 |
わずか10年で約2倍に!
2015年以降、GPIFは国内外の株式や債券に分散投資する基本ポートフォリオを採用しています。特にアベノミクス以降の株高の恩恵を受け、運用資産は飛躍的に増加しました。日経平均が2024年に史上最高値を更新したこともあり、2025年11月現在ではこの残高がさらに膨らんでいる可能性が高いと考えられます。
GPIFの基本ポートフォリオ(参考)
| 資産クラス | 目標比率 | 特徴 |
|---|---|---|
| 国内債券 | 25% | 安定性重視 |
| 国内株式 | 25% | 成長性期待 |
| 外国債券 | 25% | 分散効果 |
| 外国株式 | 25% | 高リターン狙い |
この分散投資戦略により、長期的に安定した収益を上げることを目指しています。実際、2001年の市場運用開始以降、累積収益額は150兆円を超えています。
「もし使えたら」のシミュレーション
| 項目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 年金給付額(年間) | 54.1兆円 | 2023年度実績 |
| 10年間の増加分 | 129.1兆円 | – |
| 仮に10%使うと | 12.9兆円 | – |
| 年金の増加率 | 約23.8% | 😲すごい! |
この数字だけ見ると「物価高対策できそう!」と思いますよね。
国民年金の平均月額が約6万円、厚生年金が約14.5万円ですから、これが23%増えれば生活はかなり楽になります。
でも、ちょっと待ってください。ここには大きな落とし穴があるんです!
なぜ「今」使えないのか?
理由① 年金は100年計画
日本の公的年金制度は「賦課方式」と呼ばれる仕組みで運営されています。これは、現役世代が納めた保険料を、今の高齢者に給付するという世代間扶養の考え方です。
GPIFの公式Q&Aにはこう書かれています。
「年金積立金の運用収益や元本は、概ね100年の年金の財政計画のなかで、将来世代の年金給付を下支えするために使われます」
つまり、この263.8兆円は今の高齢者だけのものではなく、私たちや子ども世代、さらにその次の世代の年金も含めた約100年分の資金なんです。
少子高齢化が進む日本では、将来的に現役世代の負担がさらに重くなることが予想されています。そのため、今ある積立金を大切に運用し、将来世代の負担を少しでも軽減しようというのが制度設計の基本思想です。
5年ごとの「財政検証」という仕組み
厚生労働省は5年に一度「財政検証」を実施し、向こう100年間の年金財政の見通しを立てています。この中で、GPIFの積立金がどのように使われていくかも計画されています。
2024年の財政検証では、経済成長や労働参加が進むケースでも、積立金は2070年代には現在の水準から大きく減少すると試算されています。つまり、今の積立金は将来に向けて計画的に取り崩されていく前提なのです。
理由② 積立金の役割は「補助」
多くの人が誤解しているのが、「年金=積立金で賄われている」という点です。実は全く違います。
年金財源の内訳(100年平均)
| 財源 | 割合 | 説明 |
|---|---|---|
| 保険料 | 約60% | 私たちが毎月払っている分 |
| 税金 | 約30% | 国の負担(消費税など) |
| 積立金 | 約10% | GPIFの運用益 ← あくまで補助 |
意外と少ないですよね。積立金は「主役」ではなく「脇役」なんです。
年金制度の主な財源は、現役世代が払う保険料と税金です。GPIFの積立金は、この2つでは足りない部分を補う「バッファー」の役割を果たしています。
特に、少子高齢化のピーク時(2040年前後)には、積立金からの取り崩し額が増える計画になっています。今の積立金は、その時のために温存されているとも言えます。
理由③ 今使うと未来がヤバい!?
もし今取り崩したら…
シナリオ①:短期的には嬉しい
・今の年金受給者の生活が楽になる
・物価高対策として歓迎される
↓ でも...
シナリオ②:将来世代の年金が減る
・2040年代以降の給付水準が低下
・現役世代の保険料負担が増加
↓ さらに...
シナリオ③:「逃げ切り世代」批判が加速
・若年層の年金不信がさらに深刻化
・制度維持への協力が得られなくなる
↓ 結果...
年金制度への不信がさらに拡大!
・保険料の未納率が上昇
・制度の持続可能性に疑問符
特に問題なのは、「今の高齢者が得をして、将来世代が損をする」という構図が固定化されてしまうことです。これは世代間の公平性という観点から、大きな問題を引き起こします。
運用益は「確定」ではない
もう一つ重要な点があります。GPIFの資産263.8兆円のうち、多くは「含み益」です。つまり、株式や債券などの評価額であり、実際に現金化するまでは確定した利益ではありません。
株式市場は変動します。2008年のリーマンショックや2020年のコロナショックのように、大きな下落局面もあり得ます。含み益を前提に給付を増やしてしまうと、市場が下落した時に給付を減らさざるを得なくなるリスクがあります。
GPIFの過去の運用実績
- 2008年度(リーマンショック):▲9.3兆円
- 2015年度(チャイナショック):▲5.3兆円
- 2019年度:+8.7兆円
- 2020年度(コロナ):+37.8兆円
このように年度ごとに大きく変動するため、短期的な運用益を給付に直結させることはリスクが高いのです。
賢く備える3つの視点
年金の「3つの誤解」を解こう
| 誤解 | 真実 |
|---|---|
| ❌ 積立金=今すぐ使えるお金 | ⭕ 世代間の公平性を保つ長期資産 |
| ❌ 運用益は今の高齢者のもの | ⭕ 将来世代も含めた100年分 |
| ❌ 年金制度は破綻する | ⭕ 不完全だが100年先まで設計済み |
「年金制度は破綻する」という言説をよく聞きますが、正確には「今の給付水準を維持するのは難しい」ということです。制度自体がなくなることは考えにくいです。
ただし、「マクロ経済スライド」という仕組みにより、将来的に実質的な給付水準が下がる可能性は高いです。だからこそ、公的年金だけに頼らない準備が重要になります。
自分でできる3つの対策
| 対策 | 効果 | 難易度 |
|---|---|---|
| iDeCo・つみたてNISA | 自分専用の「ミニGPIF」を作る | ⭐⭐ |
| 年金の繰下げ受給 | 70歳まで繰下げで受給額42%増 | ⭐⭐⭐ |
| 固定費の見直し | 通信費・保険で月1〜2万円削減可能 | ⭐ |
ポイント: 公的年金だけに頼らない老後設計が重要!
① iDeCo・つみたてNISAで自分年金を作る
GPIFが長期・分散・積立で運用しているように、私たちも同じ原則で資産形成ができます。
iDeCo(個人型確定拠出年金)の3つのメリット
- 掛金が全額所得控除(年収500万円なら年間約5.5万円の節税)
- 運用益が非課税
- 受取時も税制優遇あり
NISAの特徴
- 年間360万円まで投資可能(非課税枠の上限アリ)
- 運用益が永久に非課税
- いつでも引き出せる柔軟性
例えば、月3万円を年利5%で30年間積み立てると、元本1,080万円が約2,500万円になる計算です。これは複利の力を活かした、自分専用のミニGPIFと言えます。
② 年金の繰下げ受給を戦略的に活用
年金は65歳から受け取るのが標準ですが、受給開始を遅らせることで受給額を増やせます。
年金額の比較(国民年金満額の場合)
| 受給開始年齢 | 月額受給額 | 生涯受給額(90歳まで) |
|---|---|---|
| 60歳(繰上げ) | 5.1万円 | 1,836万円 |
| 65歳(標準) | 6.8万円 | 2,040万円 |
| 70歳(繰下げ) | 9.7万円 | 2,328万円 |
| 75歳(繰下げ) | 11.6万円 | 2,088万円 |
※2024年の年金額で試算。生涯受給額は受給開始時の年齢による
70歳まで繰り下げれば、月額で約3万円も増えます。ただし、健康リスクや家計の状況を考慮する必要があります。
繰下げが向いている方
- 健康で長生きする自信がある
- 70歳まで働く意欲と能力がある
- 他に収入源(貯蓄・不動産収入など)がある
繰下げが向かない方
- 持病があり平均寿命まで生きる自信がない
- すぐに年金が必要な経済状況
- 家族の介護などで早期リタイアが必要
③ 固定費の見直しで「見えない年金」を作る
月2万円の固定費を削減できれば、年間24万円の節約です。これは年金が月2万円増えるのと同じ効果があります。
見直しポイント
- スマホ料金:大手キャリアから格安SIMへ(月5千円→2千円)
- 生命保険:必要保障額を見直し(月3万円→1.5万円)
- サブスク:使っていないサービスを解約(月5千円削減)
- 電気・ガス:自由化で会社を見直し(月1千円削減)
合計で月1.9万円、年間22.8万円の節約が可能です。
知っておきたい年金制度の今後
2024年の年金制度改正のポイント
- 在職老齢年金の見直し(働きながら年金を受け取りやすく)
- 厚生年金の適用拡大(パート・アルバイトも加入しやすく)
- 繰下げ受給の上限年齢引き上げ(75歳まで可能に)
これらの改正は、「より長く働き、より柔軟に年金を受け取る」ことを促す内容です。つまり、国としても「65歳で完全リタイア」というモデルは想定していないということです。
マクロ経済スライドとは?
簡単に言えば、物価上昇ほどには年金額を上げない仕組みです。例えば、物価が2%上がっても、年金は1.5%しか上がらない、といった具合です。
これにより、実質的な年金の価値は徐々に目減りしていきます。だからこそ、自助努力が不可欠なのです。
まとめ
「なぜ年金の含み益を今使えないのか」を、制度の仕組みから具体的な数字、そして私たちができる対策までまとめてみましたが、いかがでしたでしょうか?
年金積立金263.8兆円は、今の高齢者だけのものではなく、将来世代も含めた約100年分の資産です。「今の物価高対策に使えばいいのに」という気持ちはよくわかりますが、それをすると未来の年金が確実に減ってしまいます。
年金制度を支えているのは、保険料(約60%)、税金(約30%)、そして積立金(約10%)です。積立金は主役ではなく、あくまでバッファーとしての役割を担っています。
また、GPIFの運用益の多くは「含み益」であり、市場環境によって変動します。リーマンショックやコロナショックのような下落局面もあり得るため、含み益を前提に給付を増やすことはリスクが高いのです。
年金制度は完璧ではありませんが、100年先を見据えて設計されています。だからこそ、私たち自身も長期的な視点を持つことが大切です。
具体的には…
- iDeCoやつみたてNISAで自分専用の資産を作る
- 年金の繰下げ受給を戦略的に検討する
- 固定費を見直して「見えない年金」を作る
- 制度の仕組みを正しく理解して、不安を減らす
特に重要なのは、早く始めることです。30代で始めるのと50代で始めるのでは、複利の効果により大きな差が生まれます。
「年金だけでは足りない」という現実を嘆くのではなく、「だからこそ自分で備える」という前向きな姿勢が、これからの時代には必要です。
「年金だけでは足りない時代」だからこそ、正しく知って、賢く備える。
情報に振り回されず、長期的な視点で、できることから一歩ずつやっていきましょう(*’▽’)
